このコーナーでは、PCやパーツなどの製品そのものでなく、メーカーのノベルティや周辺機器などの関連グッズを紹介。グッズの持ち主の証言とともに、PCの歴史を遡っていきます!
インテル印のデジカメ! お手頃価格で気軽に撮りまくり
取り上げるグッズは、前回に続いてインテルのもの。ただしバーニーマン人形などの販促のグッズとは違って、れっきとした製品です。
インテルと言えば、だれもが知る世界最大の半導体メーカー。創立から約半世紀経つ現在にいたるまで、マイクロプロセッサーやメモリーを世の中に出荷し続けてきました。
そんなインテルが、デジカメやレコーダーを販売していたことがあるのをご存知でしょうか。
そんな一風変わったインテル製品をお持ちだというのが今回のグッズオーナーであるSさんです。
Sさんが最初に取り出したのは、デジタルカメラ。
外装はプラスチックで高級感はないですが、作りはしっかりしています。正面には「Intel」のロゴ。これはいったいどういうものなんでしょうか?
「正式な名称は『Intel Pocket PC Camera CS630』というものです。2000年代前半、Skypeなどが登場してウェブカメラが普及し始めた頃に登場しました。この製品もPCとUSBで接続してウェブカメラとして使えるのですが、CS630の最大の特徴は、単体で持ち運べて写真を撮れるところです」
なるほど、ドックにおいてウェブカメラ、持ち運んでデジカメという使い方ができたんですね。
「実はこれ、子どもに使わせてみようと思って購入したんですよ。そのころ売れ始めていたデジタルカメラでしたが、まだまだ高価なものが主流でした。一方、CS630の価格は1万円以下でしたし、作りもしっかりしていたので、これなら中学生の子どもにも気軽に使わせてもいいかなと考えました」
当時はまだデジカメは珍しかったと思いますが、実際にお子さんが使ってみたらどうでしたか?
「モニターもないので当時の感覚としてはフィルム付きレンズ、いわゆる『写ルンです』に近かったんじゃないでしょうか。でも、これはパソコンさえあれば、フィルム代も現像代がかからない。なので、こちらも気軽に預けていたら、バシバシ撮ってました」
写真を気軽に撮りまくるのは、現代では当たり前ですが、Sさんのお子さんは、そんなデジタルネイティブ世代の先駆け(?)とも言えそうです。
意外に高性能!? オモチャと侮れないデジタル顕微鏡
次にSさんが見せてくれたのは、円筒形の青いプラスチックが台座に据えられたデバイスです。これはなんですか?
「これは1999年に発売された『Intel Play QX3 Microscope』でデジタル・マイクロスコープ、顕微鏡ですね。Intel Playシリーズは、インテルが玩具メーカーのマテルと組んで開発したデジタルオモチャなんですが、このQX3 Microscopeは200倍まで拡大して観察、撮影ができるという、オモチャというにはもったいないほど本格的でした。倍率200倍あれば、虫の観察や頭皮などのチェックをするには十分な性能です。現在販売されているデジタル・マイクロスコープとの大きな違いは、記録解像度が静止画の解像度は512×384ドット、動画の解像度は320×240ドット固定ということぐらいです」
デジタルトイというだけあって、やはりお子さんと一緒に使ったのでしょうか?
「これを買ったのは当時、息子が学校で科学部に入っていて、試しに使わせてみたら非常に気に入っていました。学校で使いたいというので貸したらしっかり学園祭で展示に活用していました。葉っぱの葉脈とか、虫の足とかを大きな画面に映して、ライブでしかも動画で表示できるので好評だったようです」
手軽にテクノを演奏できる!? 元祖サウンド系ガジェット
Sさんが最後に見せてくれたのは、「Intel Play コンピュータ・サウンドモーファ」というものです。ここまでの2製品は映像系デバイスでしたが、これはサウンドレコーダー、音を記録する機械です。
Intel Playシリーズなので、やはり子供が使っても安心なシンプルで丈夫なつくりになっています。このデバイスがあれば録音してデータを内蔵のメモリーに記録でき、あとからPCに取り込むことができるのです。
「最近は珍しくないんですけれど、ボイスチェンジができました。普通に喋っても、おじいさんの声になってしまったりとか、お嬢様の声になったりするのです。あと、パソコンに取り込んで波形を整形したり、フィルターをかけたりということができるのは、当時としては画期的だったと思います。プロ用の機器やソフトでしかできなかったのを、これくらいのおもちゃみたいなサイズにしてしまったのがすごいなと思いました」
やっぱり、これもお子さんが楽しんでいたのではないですか?とSさんに聞いてみると意外にも一番楽しんだのはSさん自身とのこと。
「自分でも音楽をやっていたので、同じフレーズを何個もコピーしてから繰り返し再生したりして非常に楽しませてもらいました。YMOみたいなサンプリングが簡単にできるんですよ。あと、もともと生録(※ポータブルレコーダーを使って、鉄道の音や野鳥の声などを録音するホビー)なんかもよくやっていたんです。コンピュータ・サウンドモーファだと、録った音をそのまま加工してCD-Rに書き込めて、非常に面白かったですね」
生録というディープな趣味に、デジタル玩具を活用するとはさすが筋金入りのデジタルガジェット・コレクター!
Sさんにいろいろお話ししてきて、子ども向けの製品でも大人のSさんも随分楽しんでいたようです。ぶっちゃけ自分が欲しかった? 子供をデジタル機器に触れさせてあげようとしていた? どっちが本音でしたか?
「多分、私が欲しかっただけなんですよ(笑)。いまでもクラウドファンディングとかで、目新しいデジタルなオモチャがあったらつい手を出してしまいますからね」
デジタルなモノに対する飽くなき探究心、これからもぜひ持ち続けてください!